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2008年7月29日火曜日

日本標準時JJYを発信するNICT(元 電波研)の一般公開へ行ってきました

東京小金井市の情報通信研究機構(NICT)の施設一般公開があり行ってきました。日本標準時JJYを発信しているところで、郵政省電波研究所と呼んだ方が馴染みがある世代が多いかも知れません。

JR中央線の武蔵小金井駅下車、駅前からバスで十分ほどで情報通信研究機構前(NICT)に着きました。昔はJJYの電波研と呼ばれ、その後、通信総合研究所(CRL)と変わり、今は情報通信研究機構(NICT)となっています。

情報通信研究機構(NICT)の施設一般公開

このNICTの施設一般公開の主旨は、普段、見ることのできない NICT 研究施設の紹介 、NICT の研究活動や成果の紹介 、地域の方々との交流 、科学技術のおもしろさの体験、と発表されています。

普段は何をしているところか?一般の人には皆目わかっていない施設ですが、この時ばかりは、技術者と思われる人々に混じって、夏休みが始まったこともあり、母子の姿が多くみられました。

受付を済ませると、目の前のデモンストレーションは、毎年お馴染みの地球の自転を実感できるフーコーの振り子です。数十メートルの天井から吊り下げられた直径30cmほどの円盤型の重りが振幅にして1mほどでユックリと振れています。地球の自転により、この振り子の振動面が徐々に回ることで、地球が自転していることを観察できます。

NICTに課せられた使命のなかで、最も重要なものは、何と言っても日本標準時の元になる原子時計を維持管理していることです。今回は、日本標準時(JST)が生成される現場や、JSTと時刻比較する技術と周波数校正技術、JSTを供給するサービス(標準電波JJY、テレホンJJY、タイムビジネス用時刻配信、ntpサーバー)を紹介していました。

その他、超広帯域な周波数を使い、超低電力無線によるごく短距離の通信を目指す新しいsUWB無線技術の研究や未利用周波数帯であるミリ波の身近な利用を実現するためのミリ波トランジスタの研究。
光の波で信号を伝播させる技術として、高速通信を実現するための光制御技術、デバイス技術、光ファイバ通信の大容量化に対応するため新しい周波数資源を開拓する取り組みなどが、私にとって大変興味深いものがありました。

今回、あまり目立たない展示でしたが、「無線電信開業百周年」「鉱石検波器発明百周年」の展示コーナーがありました。今年は一般の人が無線電報を打てるようになってから百年目に当たり、当時の火花送信機とコヒーラ受信機を展示して実演していました。

また、鉱石ラジオで知られている鉱石検波器が発明されて百年たち、いろいろな鉱石で電波を受信する実験もありました。鉱石ラジオはかってのラジオ少年の登竜門でしたが、ここに展示されていたモノは歴史的にもっと凄いモノでした。

説明によると、現存する鉱石受信機としては日本最古と思われる逓信省式鉱石検波器受信機で、明治41年頃、日本の海岸局で使用されていたモノです。
心臓部の検波器は、鳥潟右一が発明(明治41年)した鉱石検波器2基と佐伯美津留が発明(明治42年)したX検波器2基が装着されています。無線電話は未だ実用になっていなかった当時、既に無線電信と無線電話の両用になっていた先駆的な鉱石検波器受信機です。

逓信省式鉱石検波器受信機

真空管式になる前の実用機で、鉱石検波器が四つも装備され、通信中に何らかの理由により鉱石検波器の機能が不安定あるいは機能しなくなって通信が途切れる事の無いように、この四つが切替器により他の鉱石検波器に切り替えられるようになっているそうです。

配布された資料によると、日本最初の海岸局は、銚子(呼出符号: JCS)が明治41年5月に開局、7月には、大瀬崎(JOS)、潮岬(JSM)、角島(JTS)、落石(JOC)が開局し、公衆無線電信局の業務を開始しました。また、船舶局も天洋丸(呼出符号: TTY)が明治41年5月に開局、その後、丹後丸(YTG)、伊予丸(YIY)、加賀丸(YKG)、安芸丸(YAK)、土佐丸(YTS)、信濃丸(YSN)、香港丸(THK)、日本丸(TNP)、地洋丸(TCY)が相継いで開局。

明治41年5月に横浜を出航し、房総半島の野島崎を回ってシアトルに向かう丹後丸(呼出符号: YTG)からの呼び出しに、海岸局の銚子(呼出符号: JCS)が応答し、丹後丸から東京の新聞社宛の無線電報が送信されました。これが、日本に於ける公衆無線電報の第一号になりました。明治41年(1908年)のことで、今からちょうで百年前の出来事になります。

ところで、鉱石検波器は誰が発明したか?殆どの人が答えに窮すると思います。
これが意外や意外で、日本では、明治41年(1908年)、当時逓信省の技師だった鳥潟右一が、紅亜鉛鉱、輝水鉛鉱、マンガン鉱による鉱石検波器を発明し特許を取得しています。
また、アメリカでは1906年にピカール(or ピカード)がシリコン(鉱石)検波器を発明したとあります。その他、インドの物理学者ボースが1904年に方鉛鉱(鉱石)検波器により特許を取得ともあります。

もっと遡って調べると、なんと、1874年、ドイツの物理学者のブラウンによって金属硫化物に金属針を接触させると整流作用が生じる事が発見されています。
余談ですが、ブラウンってテレビジョンのブラウン管やオシロスコープのブラウン管の原理を発明した人で、これには私も少々驚きを隠せません。

いずれにしても、鉱石検波器は1900年代に入り無線通信に必須のモノとして研究が進められ、各人各様の方式での発明がなされ、どれを以て最初の発明者とするのか、未だにハッキリしていないようです。

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