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2006年12月6日水曜日

「DTP」って何なの?って言われた頃の「DTP HAND BOOK」

フラリと行った秋葉原の某PCジャンク店で、店先の床に置かれた箱に六色リンゴ印の付いた真っ白な表紙の本があるのを見付けました。内容はともかく、リンゴ印があれば取りあえず手に取ってみる習性はこの十数年身に付いています。

本のタイトルは「DTP HAND BOOK」とあり、Apple Computerの文字が添えてあります。裏表紙にはApple Computer Japan Inc.とあり、その時はアップルコンピュータ日本法人が出版した様に理解しました。
A5版で132ページの本ですが、価格も著者も出版社や出版日付も全く無く、どの様な形態で世に出てきたのか?考えさせられるものです。

 
味も素っ気もない白表紙の「DTP HAND BOOK」

本文を精査していくと、1990年4月辺りまでのデータが収録されていることから、原稿作成は前年より始まり完成したのは同年の秋ではないかと推測されます。

前置きが長くなりましたが、一体どの様な内容の本かと言えば、マッキントッシュによるDTP(いわゆるDesktop Publishing)のメリットを説いた本だと思われます。
1990年前後から日本の印刷業界もそれまでの写植版下の時代からマッキントッシュによるDTPへ移行する兆しが出てきました。それで、先見性のあるデザインオフィスやデザイナーが先行し、印刷会社などもこれに追随する形で日本のDTPが始動したように思われます。

私もこの翌年、予期せぬことからこのDTP業界に関わることになりました。
それまでは、NECのPC-9801や出たばかりのNECノートPC-9801NSなどで、一太郎や1-2-3で遊んでいましたが、突然目の前に置かれたMacintosh II fxには驚きました。

漢字talk6.0.7がインストールされた、その当時のマックでは最新最強モデルで、価格は驚きの約百八十万円ほど、後にも先にもこんな高額のマックはこれしかありません。

68040の40MHzは速いこと、NECのPC-9801に使われた最新V30は10MHzでとてもかないません。GUIも素晴らしく感激したついでに、角形のワンボタンマウスにはカルチャーショックさえ受けました。

インストールされたメインのアプリは、アルダスのページメーカやフリーハンド、アドビのフォトショップ、イラストレータなどで、日本語変換もイージーワードがバンドルされていてATOKに慣れている指が正確に動かず散々でした。

それでもアプリは今のものに比べてコンパクトで、たった8MBのメモリーサイズでもDTP関連のアプリがスイスイと動き、カタログや取扱説明書などの印刷物のデータを制作することが出来て、いわゆるデザイナーやイラストレーターによる職人芸を必要としないまでになることが示唆され始めました。

そんな時代の黎明期に、この本は早々と写植版下からDTPへ移行した九社の導入事例を紹介しています。そして、出来上がったデータはMOにセーブして、当時はまだまだ少なかった出力センターへもち込み製版フィルムまたは印画紙出力してもらい、それを印刷会社へ持ち込み印刷してもらうわけです。パート2では、この出力センター十六社の紹介があります。

そして残り半分のページを割いてDTPに必要なハードウェアとソフトウェアの総合カタログになっています。内容的には良くもまぁーこれほどまで克明に調べたと思われる程の掲載品目の多種多様さです。一例を上げると、

アプリでは、
Aldus PageMaker 3.0 \148,000
QuarkXpress 2.01 \180,000
Adobe Illustrator 1.9.3 \120,000
Adobe Photoshop 1.0 \135,000

ハードディスクは、
キャラベルHDD 40MB→\128,000 600MB→\948,000

スキャナーは、
エプソン GT-6000 \228,000

全体的にみてDTPのアプリは十五年も経った今でも価格の大きな変化は見られず(寡占市場で儲け過ぎ?)、反対にハードウエアは技術革新もあって劇的なまでに安くなっています。

日本のDTP(いわゆるDesktop Publishing)はこの十五年で飛躍的に進化して「写植版下」という言葉さえ死語になりつつあります。DTPの普及発展を予見して発行されたこの「DTP HAND BOOK」ですが、おそらく、DTPの現場の関係者や出力センターそれとマック関連の販売店に配付されたのでは?っと推測しています。

最後に、Apple Computerのロゴが付いている割に編集レイアウトはチープで、しかも、この本がDTPの有用性を説いているにも関わらず、写植版下で組版して印刷されているのが何とも滑稽なことだと思いました。

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